Private life

快適、即ち甲羅干し

2016/6/30
Written by 快適宇宙
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Private life

旅立ち

ゴールデンウィークを間近に控えた、とてもよく晴れた日の事だ。私はそんな太陽の陽気に誘われ、密閉された「自由な部屋」から、解放された「とても不自由な世界」へと飛び出した。
 
思ったより太陽の日差しがまぶしい。

kame_02

それもそのはず、部屋の蛍光灯は、大小のリング型で形成されているタイプなのだが、外側の大きい蛍光灯(親子に例えると親の方)が点灯しなくなって久しいからだ。その方が落ち着くし、そんな時のエディオンは、少し遠くに感じる。
 
白日の下にさらけ出された丸虫のように身をかがめ、少しずつ警戒を解きながら動き始める。自分を攻撃してくるようなものは何もないのを確認しながら。
こんな日にすることはたいてい決まっている。
 

近所の川へ行き、甲羅干しをしている亀を数えるのだ。
除夜の鐘を打つように……。

 
 

初回

正直、不安であった。
 

今の部屋に引っ越してからというもの亀を数えに行ったことはない。というより、私自身が外に誘われること自体とても稀なのだ。
近所の川の名前もよく知らない、亀がいるのかどうかも不明なままの状態である。そんなワンナイトラブは性格的に無理だ。いや、いざとなれば……。
 
そこで以前から目を付けていた近所の川(ワンナイトラブじゃないじゃん)にたどり着くと、思ったより水深がありそうな感じだ。ダイブしても軽傷で済みそうな深さ、甲羅干しするポイントも全くの不明である。私の過去の経験からいくと、葦のようなものが生え、葦が倒れ若干盛り上がった場所や川べりのブロックの窪みなどが主な甲羅干しポイントだ。私が亀でもそうする。
だがこの感じは……。
 
私の知っている甲羅干しポイントが見当たらない。ただの散歩で終わるのかもとペダルへの力が弱まる。(あっ、書いてなかったが、実は自転車に乗っている。ついでに言うと自転車に乗るのが久しぶり過ぎて、すでにお尻が痛い。)
 
そんな暗雲立ち込める中、亀を目指して「えいやっ」とペダルに力を加えて走る。焦燥感からか、不安を打ち消すためか、思いのほか力が入る。こんな時なら普段は封印している切り替え5段階目も夢ではない。

 

 
 

遭遇

最初に発見したのは小さな手足で優雅に泳ぐミドリガメだ。
 

ひどくあっさり見つかったが甲羅干しではないので、私の心に亀が泳いでいるような若干のさざ波のような波紋が起こった程度。まだ疾走はしていない。勿論、泳いでいる亀もステキなのでカウントはしている。同じように4匹ほど泳いでいるミドリガメを見ることが出来た。
 

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…が、明らかに甲羅干しポイントがない。
 

本日はメインディッシュ(亀の甲羅干しの事)にたどり着けるのだろうか?
 
仮にメインディッシュが「目玉焼き」程度だとしても文句を言う筋合いはないどころか、それを望んでさえいる。もう左手にはウスターソースが握られているのだから。(私はソース派なので、そこはご容赦願いたい。目玉焼きは和食ではなく洋食と認識している為である。)
 

この川の詳細を未だ知ることが出来ない状態では、ただ闇雲に探すことになるだろう。ただ出かけた時より日が高くなってきている。甲羅干しするにはうってつけだ。亀がよじ登る場所がなければ、ただのまぶしくて暑いだけの迷惑な存在だ。
 
今のところ、亀の存在は確認できたので不安は少し和らいだが、あとは流木のようなものがあるのを願うのみなのである。
 
そして眼前に小さな橋が見えた。

 

 
 

疾走

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小さな橋の下には水面から10cmは高くなっているコンクリで縁られた陸(人が通るような遊歩道的なものはない)があり、そこの縁に、な、なんと亀が大量に甲羅干しをしているではないか!
ど、どうやって登ったの?という疑問は些細なことだ。
 
今までの不安は完全に過去のものとなり、まさかこんな大掛かりなメンバー、私の想像ではキーボード(トロンボーンでもよい)がいる5人組のバンド程度だったが、ビッグバンド、いやオーケストラの登場にとても興奮した。正直、ここまでの数の甲羅干しを自然界で見られることは稀有であろう。少しの間、私への歓喜のファンファーレのような光景を楽しんだ。
 
数えると22匹、ほぼミドリガメだが、5匹ほどクサガメもいる。
少しミドリガメが多すぎるように感じる。
 
ご飯がミドリガメでカレーのルーをクサガメとすると、ご飯が絶対残る。福神漬けでは足りず、冷蔵庫を漁る自分の姿を容易に想像できる。
 
最悪、ワサビふりかけの出番である。……が、もちろん私のスプーンは止まらない。

 

 
 

後悔

まだ興奮冷めやらぬ、カレーのルーが口元に付いているにも関わらず、私はひどく後悔し始めた。なぜなら、今見たシーンは明らかにクライマックスだったからである。
 
…すでにスーパーサイヤ人だったのである。
 
…すでに飛鳥了は、サタンだったのである。
 
…CLOSE TO THE EDGEのイントロだったのである。
 

今後、これ以上のものは確実に出て来やしない。
これ以上となると亀のテトリスくらいじゃないと感動できはしない。しかも、テトリスでゲームオーバー直前くらい積み上がっていないと私の心は動きそうにない。

 
 

30分

そう、私の旅は始まってまだ30分くらいしか経っていないのだ。しかも、コンビニに立ち寄った時間含むだ。
サトシとピカチュウでさえ打ち解けられないような時間しか経っていないのに、もうチャンピオンロード開始だったのだ。せめてジムリーダー程度ならば……。
 
だが、これ以上を求めてペダルへ力を入れる。そんなものはないのは分かっていながら……。
 
だって、もしこれ以上のものが見られるのなら、この川はきっと国内有数の亀スポットになっていたであろうことは明白だからだ。
 
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案の定

ぼちぼちは散見できるものの、あの光景には到底及ばない。今かいている汗はただの労働の汗でしかなく、テニスをした時のような汗の爽快感のようなものは一切ない。(テニスはしたことないけど想像はできる!)
 

実際、あの大量の亀を見た場所よりも少し上流に来ると、草が生え、川の両サイドもほどほどの陸地を湛え、私が亀ならあんなスラム街のようなドブ川より、こちらの方がさぞ住み心地が良かろうと思うのだが、大雨の度に下流に流されてしまうのか、ほぼほぼ亀を見ることはない。生い茂った草の為に私の目から逃れているやもしれぬが……。いや、そうであってほしい。
 
途中、ヌートリアがいたが、「ヌートリアはスリーポイント」のようなルールは今のところないのでスルー。私が幼少の頃には一切見かけたことがなかった生物である。
一体どこから湧いて出たのであろうか?
もちろん、こちらも害獣らしい。
 
そんなわけで、不意に訪れた私の心の旅、亀を数える旅は出オチ感満載で終わったのである。後半はほぼ惰性と義務?のみの旅となってしまった……。
 
 

 
 

結果発表?

結果、トータルで(タートルでも間違いではない)45匹発見できた!往復でカウントしているのでダブっているかもしれないが、残念ながら亀を個別で判断できる眼力は私には備わっていない…。もちろん、大量にいた場所ではカウントしていないのであしからず。
 
メモを取ってはいなかったので、「クサガメ」と「ミドリガメ」の比率は不明だが、体感3:7くらいで思ったより「クサガメ」は多いように感じた。過去によく見に行った川に比べると、川の長さにもよるが、はるかにたくさんの「亀」に出会うことができた。
それにしても、ミドリガメ多すぎるぞっ!
 
また、別の川へ私の心の甲羅干しへ行く日も
そう遠くないであろう。
 

※亀を飼うときは終生付き合うつもりで飼いましょう。
放しちゃダメだよ。めっ!
 

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