Private life

快適、即ちミステリーゾーン

2016/8/24
Written by 快適宇宙
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Private life
廃屋

いつのことだったのだろうか。
はるか昔のような気もするが、つい最近のことのようにも思える。着ていた服は半袖だったので、おそらく夏であることは間違いないであろう。思い出そうとしてはみるが、まるで夢を思い出す時のようにひどく曖昧な感じがする。
今からここに記すことは事実のみを記していきたいと思う。だが多分に私が後に得た記憶等が入り乱れている可能性があることをご了承いただきたい。

某月某日、私は人が住まなくなって長い年月が経っている、いわゆる「廃屋」へと行ってみることにした。夏の暑さがそうさせたのか、まるで何かの力に引き寄せられたかのように、その時は何も考えずに暇つぶし程度の軽い気持ちで出かけた。そう、その時は……。

どれくらい歩いただろうか、シャツが汗に濡れ背中にぴったりと張り付いている。さっき買ったばかりのお茶も、もう半分くらいに減り、生暖かくなってきている。すでに目的の廃屋は目に映り、少しずつだがそのフォルムがはっきりと浮かび上がってくる。目に映った時点で到着したような気分になったせいか、私は自分の速度が分からなくなってきていた……。

随分歩いたような気がするが、おそらく時間にして20分も経ってはいないだろう。とうとう廃屋の前へと到達した。

kaiteki_01
入口にはひどく立派な門が建っていた。昔、住んでいたであろう住人はとても裕福だったようだ。それが今や人が住まなくなっているには一体どういった理由があるのだろうか? 不幸な事件でもあったのであろうか? いわくつきの物件なのかもしれない……。

私は恐る恐る中へ足を踏み入れて行くと、何かに睨まれているような強い視線を感じる。 ゆっくりと振り返るとそこには……。

kaiteki_02
織田裕二ではなく黒猫がいた。
若干の胸騒ぎが起こった。私が猫アレルギーの為なのだろうか?
それとも……。
ひどくこちらを警戒しているように見える。まるで私に「帰れ」とでも言いたげな感じだ。この猫は未だに飼い主の帰りを待っているのだろうか? もう帰ってくることのない飼い主を……。
何かこれからを暗示しているようで不吉な気がしてならない。私の歩みが緩み始めてきた。
それでも黒猫を後ろに見ながら進んでいくと……。

kaiteki_03
誰も住んでいないはずの家の木に麦藁帽子が……。
この麦藁帽子の持ち主は一体どうなってしまったのだろうか?
否が応でも何か不幸な事件が想像される。先ほどの黒猫はこの麦藁帽子の持ち主を待っていたのであろうか?
それともどこかで少年が風で飛ばされた麦藁帽子のことを母親に謝っている、その飛ばされた麦藁帽子なのであろうか?
少し様子を見ていたが、勿論、持ち主は現れない。そのままとても広い庭を進んでいくと、そこには得体の知れないモニュメントが……。

kaiteki_04
これは一体何なのだろうか?
五芒星を表しているように見える。密教の儀式でも行われていたのであろうか? それのせいでここは廃屋になってしまったのであろうか?
それともセーブポイントなのだろうか?
そう考えるとボス戦が近いことが窺われる。
私のLvで大丈夫なのだろうか?
こんなことならもっとLvを上げておけば良かった……。
武器屋で武器を新調しておけば良かった……。
べホイミを憶えてから来れば良かった……。

ブラジルの人、
聞こえますか?

そんな後悔はしていても町に戻る気はさらさらない。このまま進むしかないのである。まだ、家屋には着いていない。ここに住んでいた過去の住人は、「ちょっとコンビニへ」と思った時はどうしていたのだろうか? 正直、私の家からなら既にコンビニへ着いてお会計を済ましたであろう距離だ。
それが廃屋になった真相かもしれない……。

そこから少し進んだところに、次は……。

kaiteki_05
井戸である。枯れているようだ。地球の裏側まで続いていそうな深さだ。しかも井戸によくある縁のようなものがなく、ただの暗い穴がぽっかり開いているだけである。金網と柵があるから良いが、なければこの闇の中に吸い込まれていきそうである。あのジェダイナイトのアナキンのように……。
もしかすると、ここの住人も既に……。

屋内へ
私は非常に不可解なものたちをすり抜け、
とうとう屋内へと辿り着いた。

あの庭の広さである。家屋も相当に大きい。廃屋とはいえ土足は厳禁である。私は用意されたナイロン袋に靴を入れて中へ入っていくことにした。

ミシ…ミシ…と床が鳴る。まるで私が入って来たのを今はいないはずの主人へ伝えるように……。

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長らく人が住んでいないはずであるが、そんなに荒れることなく保存状態は中々良いのではないだろうか。間取りはLDKでは表現出来ないほどの広さ。正直、私がここへ引っ越すことになってもTVを何処へ置くか、数日思案する必要があるであろう。
はっきり言って不便そうである。家族で住んでいてもおそらくすれ違ってばかりであろう。勿論、心も……。
きっと母親の「風呂入りよ~」という、しつこい声も聞くことは出来ないであろう。

今のところ、古い廃屋とはいえ心霊の類には出会ってはいない、私には霊感というものが備わっていないからであろうか?どちらかといえば鈍感な方である。そんな私でもこれには背筋が凍りついた。

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壁に無数の突起が出ている。一体何の為のものなのだろうか?
過去の住人のパラノイアのようなものを強く感じる。
何かを掛けるには多すぎるような気がする。もしかしたらビリヤードのキューでも乗せるのであろうか?その割にはビリヤード台のようなものも見当たらない。
霊感のない私には一切の検討がつかない……。 私はこれが一体何なのか分からないまま、先へ進むことにした。


灯篭流し

私はさっきから前へ進んでいるはずだが、似たような間取りばかりで無限回廊を彷徨っているような錯覚に陥っていた。そんな不安をかき消すために、私は無限回廊ではないことを確認するため、ある部屋の写真を撮り、それとこの先の部屋を見比べようと考えた。
それがこの写真である。

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まるで灯篭流しのようなものが写っている。確かにここは部屋の中だったはずである。今となっては本当にそれがそこにあったかどうか私の記憶は定かではない……。


憶測

私は今までこの廃屋を散策していて、過去の住人達を想像していた。
大きな敷地、大きな家屋、とても裕福であったであろうことはすぐに分かる。いや、実はそうではなく背丈のとても大きな人間だったのではないかということだ。家屋がひどく大きいのもその為だ。その証拠をお見せしよう。

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一見なんの変哲もない、ハンガーでも掛けるのかと思うような棒が出ている。そう、ハンガーを掛けるとするならば、あまりにも高い場所に設置してあるのだ。3mくらいの高さであろうか、私の背伸び程度では触れることも叶わない高さである。この突起を活用できる人間は、2.5mほどの身長がなくてはならぬ。そう、ここ住んでいたであろう住人は巨人だったのである。 勿論、そんな人間がいたかどうかは大変疑わしいが、今の私にはこの世に巨人がいても不思議ではないように思えて仕方がなかった。おそらく、この廃屋が少しずつ私を狂わせていたのかもしれない……。


上がれない階段

一体、この家屋は何階建てなのだろうか?
既にいくつかの階段を上がってきていたように思う。もう終わりかと思うと、また階段が出てくる。私は「またかぁ」とげんなりし、上りながら上を見ると、な、なんと……。

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行き止まりではないか! 一体何の為の階段なのであろうか?
何かとても不吉なものを感じる。上がってしまうと二度と戻れない一方通行の階段のような気がする。もしかすると、ここがあの世とこの世の境目なのかもしれないのだ。とすると上がればジョン・レノンに会えるかもしれないという淡い期待のようなものを抑えながら、私は次の階段を探していた……。

次の階段が未だ見当たらないまま私は彷徨い歩いていた。そんな私の目に得体の知れないものが飛び込んできた。

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謎の小さな扉である。何故か厳重に塞がれている。何か人には見せることが出来ない物でも隠しているのではなかろうか。だが大槻ひびきのDVDを隠すには少し仰々しいような気もする。恐怖により開けることは出来なかったが故に私は恐ろしい妄想に囚われ始めていた……。


カルタ

先ほどから何か気配を感じる。すっと視線を動かすと人のようなものが見えた気がした。私はその正体が知りたくて急いで人影が見えた別棟へと走った。この廃屋は別棟が2、3存在する。一度外へ出なければならない。ただならぬ予感がする。焦って靴が履けない。

廃屋のはずなのに実は人が住んでいたのではなかろうか? それにしては生活臭のようなものは感じなかった。これでこの廃屋の謎が解けるのではないかと期待し、息を切らしながらたどり着いたその先には、やはり……人が住んでいたのだ。

2人の女性が百人一首に興じている。
少しばかり気が引けたが、今までの謎を解き明かすために、私は勇気を振り絞り声を掛けた「すみません」だが、百人一首に夢中になっているのか返事はない。私はもう一度声を掛けた「あのー」……またもや沈黙が続く。よほど熱中しているようだ。私はこの熱狂のカルタを待つことにした。

……終わらない。いや、読み手すらいないのである。
私がここにたどり着いてから一枚も札は取られていないのである。
先ほどから毛の先ほども動いていない。瞬きすらしていないのである。まるで死者のように……。
不安に感じた私は近づきよく見てみると、それはなんと……

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人形だったのである。
1/1スケールである。今にも札を取りそうな躍動感に溢れている。私が思わず声を掛けたのも納得の出来ではないだろうか。ここの住人はフィギュアのコレクターだったのかもしれない。
インディー博士ならこの2体の人形の視線の交わる場所を掘り起こしそうなものだが、私にはそうすることは出来なかった。いや、あえてしなかったのである。アークが出てくる予感しかしなかったからだ。今の私には、この2体の人形をそっとしておくのが最善のように思えた。

そして、私は何の答えも見いだせないまま、この廃屋から去ることにした。


全容

これまで私が不可解なものに翻弄されながら彷徨い続けた廃屋の外観をご覧いただこう。今まで読んでいた読者なら何かお気づきかもしれない。 いや、過去にここを訪れた者も少なくないであろう。

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荘厳である。私が廃屋と認識していたのは間違いのような気がしてならない……。それの答えかどうかは分からないが、このそばにある好古園とこの廃屋で¥1,040の入場料を支払っていたからだ。この夏の暑さにもかかわらずたくさんの人で賑わっていたのも、私の認識を覆す好材料となっている。 だが、この廃屋から外界への門をくぐった時の私は、きっと『ショーシャンクの空に』のジャケットのようになっていたのは間違いないであろう。
今でも夏の暑い日になると、まるで『魔の巣』に迷い込んだような、この日のことを思い出す……。

以上が、私が体験してきたことの全てである。
今後、あなた自身がこういった場所へ立ち寄ることがあるなら、ぜひとも心に留めておいて欲しい。この世には未だ解明されていない謎があるということを……。

※廃屋へは不法侵入になるから、絶対入っちゃだめだよ。めっ!



著者紹介

快適宇宙お宝市番館 飾磨店 店長
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